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会社携帯でGPSを利用するメリットとは?法律上の注意点も確認
会社携帯にGPSを付けようと考えているなら、メリットとデメリットを正しく把握しておきましょう。位置情報を取得するリスクを理解していなければ、大きなトラブルにも発展しかねません。
会社携帯でGPSを利用する上で重要なポイントを解説します。
目次
会社携帯にGPSを付けるのは違法?
(出典) photo-ac.com
会社携帯のGPSで従業員を管理する場合、利用の仕方を誤ると法に触れる恐れがあります。まずは、会社携帯にGPSを付ける際の注意点を確認しましょう。
使いようによっては違法になる
会社携帯のGPSを使って従業員の位置確認や安全管理を行うこと自体は、法律上問題ないと考えられています。
ただし、会社が従業員を管理監督して自由を制約できるのは、あくまでも業務時間内のみです。業務時間外もGPSで従業員を監視すると、プライバシーの侵害で違法と判断される可能性があります。
GPSで位置情報を取得する頻度や時間も、必要最低限の範囲内に収めるのが無難です。従業員との間でトラブルが発生したケースに備え、会社携帯でGPSを使うことに対して従業員の同意も得ておきましょう。
そもそもGPSとは
(出典) photo-ac.com
端末の位置を把握できるGPSとは、どのような機能なのでしょうか。GPSの基礎知識や位置情報の精度を上げる方法について解説します。
正式名称は「Global Positioning System」
GPSの正式名称は『Global Positioning System(グローバル・ポジショニング・システム)』で、日本語に訳すと『全地球測位システム』です。
GPSを利用すると、GPS端末の現在位置の検出が可能です。地球の周りには複数の測位衛星が飛行しており、衛星からの信号をGPS端末がキャッチすると、端末の位置が特定されます。
GPSは元々アメリカが軍事目的で構築したシステムです。民間用に無料開放されているGPSは、軍事用のGPSより若干精度やセキュリティーが劣る設定がされています。
受信できる環境と誤差
GPSで利用されている測位衛星の信号は、地球全体をカバーしています。理論上は地球上のどこにいても位置情報の把握が可能です。
ただし、屋内にいると建物が電波を阻害するため、正確な位置を割り出せません。建物の中にいる場合は、建物内にGPS端末があることまでしか分からないでしょう。
屋外にいるケースでも、高層ビルの間や山間部の場合は精度が落ちます。ナビが現在地とまったく違う場所を示すのを経験したことがある人も多いでしょう。
GPSの測位誤差は、受信環境が良好なケースで2m程度です。衛星からの信号をうまく受信できない場合は、数百mもの誤差が生じるケースもあります。
位置情報の精度を上げる方法
会社携帯のGPSの精度が低ければ、正確な位置情報を把握しにくくなってしまうでしょう。位置情報に誤差が生じたり、現在位置が検出できなかったりする場合は、以下に挙げる三つの方法を試せばGPSの精度を上げられる可能性があります。
・位置情報サービスをオンにする
・Wi-Fiの設定をオンにする
・時刻の設定を自動設定にする
上記のいずれもスマホの設定で変更が可能です。Wi-Fiの設定をオンにする際は、特定のWi-Fiスポットに自動接続させるのではなく、単にWi-Fi設定をオンにしておくだけにしましょう。
会社携帯でGPSを利用する企業のメリット
(出典) photo-ac.com
会社携帯のGPSで従業員の位置が分かるようになれば、勤怠・労務管理が容易になる上、業務の効率化にもつながります。緊急時に役立つのもメリットです。
正確な勤怠・労務管理が容易になる
会社携帯でGPSを活用する企業側のメリットとして、より正確な勤怠管理や労務管理ができるようになる点が挙げられます。
労働時間を把握しにくい営業担当者や現場作業員がいる場合、位置情報を特定できれば場所ごとの滞在時間から実際の労働時間を割り出せるでしょう。残業時間の算出も容易になります。
直行直帰する社員がいる場合も、GPSで位置情報を把握すれば、実際の始業時刻と終業時刻が正確に分かります。働いていないのに残業代を請求したり、寄り道をして仕事をサボったりする状況も防げるでしょう。
業務の効率化にも
GPSの活用は業務の効率化にもつながります。外出中の従業員がどこにいるのか分かるため、状況に応じて即座に人員を移動させることが可能です。
例えば配送業を営む会社なら、現在地や運行ルートをGPSで特定し、配送車の現状把握や運送ルートの改善を図れます。急な予定変更への対応も可能です。
人材派遣サービス業でGPSを活用すれば、人材を必要とする現場へ人員を即座に派遣できます。到着までの時間がある程度読めるため、サービスの質も向上するでしょう。
災害時など緊急時のため
震災や風水害に見舞われた際、企業は従業員の安全を確保しなければなりません。これは道義的な観点から求められているのではなく、法律で定められている企業の義務です。
災害時に従業員がどこにいるのかを把握するために、会社携帯のGPS機能を利用する企業が増えています。普段の業務ではGPSを使わずに、緊急時のみ活用する旨を社内規定に盛り込んでいるケースもあるでしょう。
日本は世界有数の災害大国であり、企業も地震・台風・大雨・洪水などの自然災害リスクに備えておかなければなりません。設備やデータを守るだけでなく、従業員を守るための対策もしっかりと講じておく必要があります。
会社携帯でGPSを利用する社員のメリット
(出典) photo-ac.com
会社携帯のGPSを利用すれば、企業だけでなく社員にもメリットがあります。GPSの利用を社内に周知する際は、社員からの反発を回避するために、社員側のメリットも伝えられるようにしておきましょう。
直行・直帰が可能になる
出社せず直行・直帰で働く機会が多い場合、始業時と終業時の報告とともにGPSで位置情報を確認できれば、社員の正確な労働時間を確認できます。
報告が遅くなった場合も、社員が必要以上にあわてなくて済むでしょう。GPSの履歴をチェックすれば、過去にいた場所と時刻が分かるためです。
社員によっては、GPSによる管理を『常に監視されている』と捉え、不愉快に感じるケースも少なくありません。考え方によっては社員にとっても便利な仕組みである点を、社員にきちんと伝えておくことが大切です。
万一の紛失時も安心
会社携帯でGPSを利用すれば、社員が端末をなくしてしまった際にも、端末の場所を特定できます。社員が会社へすぐに報告すれば、端末の迅速な回収が可能です。
会社携帯の紛失はセキュリティー面でのリスクが高まるため、個人携帯をなくしたケースとは異なり問題が大きくなりがちです。GPSを利用していない場合、紛失時に社員が大きな責任を感じてしまいかねません。
しかしGPSを利用できれば、万が一の紛失時も安心です。端末をなくさないように、社員が過度に気を使う必要がないというメリットがあります。
会社携帯でGPSを利用するデメリット
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GPSによる管理システムの導入には、デメリットやリスクがあることも覚えておきましょう。主なデメリットと対処法を解説します。
社内からの反発のリスク
会社携帯でGPSを利用すると、社内から反発を受ける恐れがあります。会社から監視されていると感じて不快になる社員が一定数出てくるためです。
ただし、反発を受けるのが面倒だからといって承諾を得ずに運用を進めてしまうと、より深刻なトラブルが社員との間に発生しかねません。
場合によってはプライバシーの侵害と受け止められ、労働基準監督署や弁護士に相談されるケースも起こり得ます。会社携帯でGPSを運用する場合には、事前に社員からきちんと承諾を得ておくことが大切です。
社員のモチベーション低下
GPSで常に監視されていると感じる社員は、落ち着いて仕事ができなくなる恐れがあります。「監視されるほど会社から信用されていないのか」と、会社に不信感を抱く社員も出てきかねません。
このような社員がモチベーションを下げると、結果的に企業の生産性の低下につながってしまいます。GPSを利用するなら、社員のモチベーションにも気を配らなければなりません。
最初に説明するタイミングで、あくまでも企業側の利便性を上げるための施策である点や、社員側にもメリットがある点をきちんと伝える必要があります。
みなし労働時間制が難しくなる
外回りの営業担当者や現場作業員を抱えている場合、企業は労働者に『みなし労働時間制』を適用できます。みなし労働時間制とは、労働時間の正確な把握が困難な従業員に対し、あらかじめ決めておいた一定の時間を働いたことにできる制度です。
みなし労働時間制を導入すれば、勤務時間や人件費の管理が容易になります。しかし、GPSを利用する場合は正確な労働時間を把握できるため、みなし労働時間制の導入が難しくなるでしょう。
正確な労働時間が分かるということは、残業時間も正確に算出できるという意味もあります。残業が発生している社員には、適切な残業代を支払わなければなりません。
会社携帯でGPSを運用する際のポイント
(出典) photo-ac.com
会社携帯によるGPS管理で注意したいポイントを紹介します。以下のポイントを押さえておけば、導入時や運用時のトラブルが発生しにくくなるでしょう。
位置情報の利用は業務時間内のみを徹底
会社携帯でGPSを運用する場合は、業務時間内のみ位置情報を利用する点を徹底しましょう。前述のとおり、業務時間外にGPSで従業員を監視するのはプライバシーの侵害となり、違法と判断される恐れがあります。
勤務時間外の自分の行動も会社に把握されているのではないかと不安に思う社員も出てくるかも知れません。GPSの活用によって会社に不信感を持たれないためにも、GPSを何のために活用するのか、そして勤務時間外はGPSを利用しないことを社員に通達するようにしましょう。
事前にGPSの利用を周知
企業によっては、社員から反発を受けるのが面倒だという理由で、社員に事前報告を行わないままGPSを利用しているケースがあります。
しかし、社員に無断で会社携帯にGPSを付けてしまうと、万が一社員に発覚してしまった際に大きな反発を受けかねません。場合によっては訴訟を検討される恐れもあります。
社員との間に無用なあつれきを生まないためにも、事前にきちんとGPS利用を周知しましょう。GPSを用いて社員の位置情報を取得する旨を、あらかじめ就業規則に規定しておくのも重要です。
GPS利用の目的を明確にしておく
社員にGPS利用を周知するときには、内容をきちんと伝えられるよう、GPS利用の目的を明確にしておきましょう。業務時間内のみの利用である点や、必要なとき以外は位置情報を取得しない点などをはっきりと示す必要があります。
会社携帯の使い方や外出時の連絡についても、事前にルール化しておきましょう。業務時間外の取り扱いや始業時・終業時の報告などをルール化すれば、社員側も受け入れやすくなります。
社員の「行動」について口を挟まない
会社携帯のGPSで社員を管理する際は、社員の行動について口を挟まないようにしましょう。明らかにサボっているケース以外は、細かく指摘しないほうが無難です。
コンビニに立ち寄った時間や昼食の時間まで確認すると、社員は監視されているという意識をより強く感じてしまいます。軽い雑談のつもりで話したとしても、度を越せばハラスメントとして捉えられかねません。
ちょっとした息抜きは、社外で働く人なら誰にでもある行動です。確認のために従業員の細かい行動を見るケースはあっても、わざわざ従業員に対して口にしないように注意しましょう。
まとめ
会社携帯にGPSを付けて社員の位置情報を取得すれば、より正確な勤怠・労務管理を行えるようになります。業務の効率化につながる点や災害時に役立つ点もメリットです。
一方で、常に監視されている意識を社員が持ってしまうと、社内から反発を受けたり社員のモチベーションが下がったりするリスクもあります。
会社携帯でGPSを運用する際は、業務時間内のみの位置情報取得を徹底しましょう。GPSの利用目的を明確にした上で、事前に利用を周知する点も重要です。
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