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会社携帯にはルール設定を。禁止事項やトラブルの対処法を明記
会社携帯の私的利用は無駄なコストを増大させるだけでなく、情報漏えいによるトラブルを招きます。携帯を従業員に支給する前に、使用上の注意点や禁止事項を記したルールを設けましょう。記載すべき項目や罰則規定を定める際のポイントを解説します。
目次
会社携帯のルール作りで被害を未然に防ごう
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会社携帯の導入にあたり、最初に着手すべきなのが『会社携帯のルール作り』です。会社携帯を私物化させないためにも、明確なルールを定めましょう。
ルールの必要性
会社携帯の私物化が生じると、取り返しのつかないトラブルに発展することがあります。
特に注意が必要なのが、私的利用による情報漏えいです。有害なアプリのインストールでマルウエアに感染したり、安全性の低いフリーWi-Fiへの接続で会社の機密情報を盗み見されたりする可能性はゼロではありません。万が一、顧客の個人情報が流出すれば、会社の信用が失墜します。
また、私的利用による『通信コストの増大』も懸念されるため、業務以外での使用を厳格に禁じる必要性があるでしょう。
会社は独自に貸与物のルールを決められる
労働基準法に貸与物の利用を制限する条項はありませんが、会社携帯は会社の所有物であるため、利用ルールは会社が独自に決められます。
一方、従業員は就業規則や労働契約を遵守し、誠実にその義務を履行しなければなりません(労働基準法第2条2項)。会社携帯の私的利用によって業務に支障をきたしたり、会社に損害を与えたりすれば、義務違反として処分の対象になり得ます。
会社携帯のルールを作成する際は、何のための規則か・会社の方針などを明らかにするため、ルールの第1項に以下のような『目的』を記載しましょう。
●本規定は、会社携帯を効率的かつ安全に使用するため、その適正な管理について定めたものである
●この規定は、業務で使用する会社携帯について定めたものであり、業務の効率化と事故防止を目的とする
貸与誓約書の提出でトラブルを減らせる
従業員に貸与誓約書の提出を求めるのも、私的利用対策の一つになります。誓約書とは、当事者の一方がもう一方に対して、約束事を守る意思を表明する書面です。一般的な契約書と違い、誓約をする側のみが署名捺印します。
誓約書の主な目的は、口約束による言った・言わないのトラブルを防ぐことです。会社携帯を巡って労使間の争いに発展した際、誓約書が企業側の言い分を正しいと主張する根拠にもなり得るでしょう。
当事者間の合意と社会的妥当性がある場合は法的効力を有しますが、公序良俗に反するものは法的効力が認められない点に注意しましょう。
会社携帯のルールに含めたい項目
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会社携帯のルールには、業種・業界を問わずに必ず盛り込んでおきたい項目がいくつかあります。使用と管理におけるポイントをおさえましょう。
セキュリティーに関する遵守・禁止事項
最重要項目ともいえるのが、セキュリティーに関するルールです。不正アクセスやサイバー攻撃などによって機密情報・個人情報が流出すると、会社は多大な損害を被ります。
従業員には業務以外での使用を厳禁とした上で、IDやパスワードの管理を徹底させましょう。ルールに盛り込むべき遵守・禁止事項を以下に挙げます。
●ID・パスワードを他人に漏らさない
●同じパスワードを使い回したり、他人が容易に推測できるものを設定したりしない
●業務に不必要なアプリやソフトウェアはインストールしない
●送信者不明のメールは開封しない
●ウイルスチェック、OSのアップデートを定期的に行う
管理する側には当たり前となっていることも、従業員のITリテラシーレベルによっては思い至らない可能性があります。できるだけ具体的に従業員が取るべき行動を明文化しましょう。
私的利用の範囲
私的利用を禁止するとした上で、『何を私的利用と見なすのか』の範囲を明確にしましょう。業務利用と私的利用の線引きが分からず、本人の自覚なくルール違反が起こるケースも少なくありません。
『常識の範囲内で』という曖昧な言葉は使わず、より具体的な言葉で示すのがポイントです。
●業務に関係ない電話やメールはしないこと
●会社に無断でアプリやソフトのインストールおよび変更はしないこと
●会社携帯を使って、SNSに書き込みをしないこと
●他の従業員の携帯電話番号やメールアドレスをプライベートで使用しないこと
私的利用の禁止事項を具体的に明記しておくことで、管理者が違反者に対して具体的な指導がしやすくなるメリットがあります。違反行為であることが誰の目にも明らかになるため、処罰の正当性も示せるでしょう。
個人情報や機密情報の取り扱いへの注意
情報が漏えいする要因の一つに、スマートフォンによる画像や動画の撮影が挙げられます。業務上、社外で写真や動画を撮影しなければならないときは、『削除のルール』も併せて盛り込むことが重要です。
また、会社や取引先の情報をネット上に書き込んだり、コミュニケーションツールで送信したりしないように管理を徹底しましょう。
会社携帯を支給すると、ほとんどの従業員は会社用と個人用の2台を所持することになります。使い分けるのが面倒になり、会社携帯でSNSやブログの投稿をしてしまうということも考えられます。
個人情報や機密情報の取り扱いに十分な注意を促すとともに、必要に応じて削除や報告の手順も記載しましょう。
会社携帯の管理方法
個人情報や機密情報の漏えいは、会社携帯の盗難や紛失によっても引き起こされます。管理方法を従業員に完全に委ねるのではなく、一定のルールを決めるのが望ましいでしょう。
例えば、就業時間になったら携帯を配布し、退社前に回収する方法があります。配布・回収の手間を省きたいのであれば、所定の場所に格納するルールを定めておくとよいでしょう。外出先から直帰する場合は、業務終了後に電源をOFFにすることを義務付けます。
また、万が一の紛失を考えて『画面ロックの設定』も徹底しましょう。落下による故障や紛失には、携帯ストラップやカバーの着用が有効です。
トラブル発生時に会社が取るべき対応
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どんなに明確なルールを設けたとしても、トラブルを完全に防止するのは難しいといえます。会社への影響を最小限に抑えるためにも、トラブル発生時に管理者が取りたい対処法をマニュアル化しておきましょう。
遠隔ロックと関係各所への連絡
会社携帯の盗難・紛失があった際は、速やかに管理者に報告することを義務付けます。情報が第三者の手に渡ることを防ぐため、管理者は『遠隔ロック』や『遠隔初期化』を行いましょう。
多くの会社では、会社携帯やデバイスを一元的に管理できるツール『MDM(Mobile Device Management)』を導入しています。
紛失時は遠隔操作で端末に利用制限がかけられるため、ロック画面を設定していなかったとしても大切な情報の流出リスクを最低限に抑えられます。携帯の位置情報を取得し、速やかに回収しましょう。
情報の流出が確認された場合は、内容に応じて関係者・監督官庁などへの報告が必要です。規模によっては、ウェブでの報告やマスコミに対する情報開示を行います。個人情報が流出した場合は、本人への通知と心からの謝罪が欠かせません。
始末書の要求
会社携帯の利用におけるルール違反やトラブル発生時に始末書の作成を求めたい場合、会社の就業規則の規定も確認しておきましょう。
あとから始末書の提出は不当な処分だと従業員に主張される可能性もあるため、いつ・どこで・何が起こったのかを順序立てて記入するよう指示します。何に対して謝罪・誓約しているのかを明文化するのがポイントです。
会社携帯のルールを設定するときのポイント
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会社携帯の私物化を未然に防ぐためには、ルールが適切に運用されているかどうかのモニタリングが欠かせません。会社側が使用状況を定期的にチェックする旨をルールに記載しましょう。チェック項目や方法をマニュアル化し、担当者間で共有することも重要です。
使用状況の確認についても明記する
各キャリアの料金明細から従業員の私的利用が判明するケースも多くあります。キャリアのサービスによっては、個別の料金や閲覧履歴・発信先を特定することも可能なため、勤務態度に問題がある従業員については、使用状況を個別に確認した方がよいでしょう。
とはいえ、従業員に範囲や方法を何も知らせないまま勝手に会社携帯のデータをチェックするのは、モチベーションの低下やプライバシーの侵害になり得ます。ルールには以下のような記載が必要です。
●会社は、従業員に貸与した会社携帯の使用状況を閲覧することができるものとする
●会社は、必要に応じて、従業員に従業員に貸与した会社携帯の利用状況や通話履歴を電話会社に照会できるものとする
●明らかに私的利用と判明した場合は、私的利用をした通話料およびデータ通信料を使用者から徴収する
モニタリングを行う旨をルールに定めておくとともに、私的利用が判明した場合の対処も忘れずに記載しましょう。
管理者側も小まめなチェックを心がける
管理者側も定期的に使用状況をモニタリングし、ルールに沿った適切な利用がなされているかをチェックする必要があります。トラブルが生じたときは、事故事例を担当者間で共有して再発防止に努めましょう。
例えば、通話履歴に見慣れない電話番号が複数回ある場合、私的利用や競合他社への情報の提供などが考えられます。
データ通信料が異常に高い従業員がいれば、通信種別や通信日時・通信データ量などの記録を確認しましょう。携帯に業務とは関係ないアプリがインストールされていないかもチェックします。
ただし、基本的にはウェブサイトの閲覧履歴やメールの内容・チャットのやり取りまでは確認できません。各キャリアには一部のアプリやサイトを制御できるサービスもあるため、私的利用が疑われる場合は利用制限をかけてしまうのも一つの手です。
罰則規定を設けるときの注意点
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ルール違反に対する罰則を設けて従業員の気を引き締めることも私的利用の防止に効果的でしょう。
罰則規定の設け方によってはトラブルの元にもなるため、法律の専門家に相談しながら進めていくのが確実です。
過失による紛失・破損の弁償について
労使協定に定めがない限り、会社携帯の弁償額を従業員の給与から勝手に天引きすることはできません。弁償を要求する場合、実際には全額弁償は認められにくいと考えられます。
労働法16条(賠償予定の禁止)には『使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、または損害賠償額を予定する契約をしてはならない』との記述があります。あらかじめ損害賠償額の金額を決めることもできません。
会社側は紛失や破損のトラブルに備え、各キャリアの有料パック・オプションに加入しておくことも検討しましょう。
トラブル発生時の負担を軽減できる、会社携帯のレンタルサービスもあります。例えばソフトバンクの法人プランでは、『レンタル保守パック』に加入しておけば、故障したときの修理費・紛失時の損害金・電池パックの交換手数料がかかりません。
参考:
情報漏えいに対する損害賠償請求について
会社携帯の使用によって情報漏えいが起きた場合、会社としては懲戒処分や損害賠償請求で責任を取らせたいのが本音でしょう。
就業規則やルールで『守秘義務違反』が懲戒事由とされているなら、懲戒処分と同時に該当の従業員に対して損害価額相当分の賠償が請求できる可能性はあります。ただし、こちらも事前に金額を決めておくことは禁じられている上、被害の全額を従業員に負担させるのは難しいと考えましょう。
情報管理の体制そのものに不備があれば、企業側の責任も問われます。
処分の程度についても、流出した情報の機密性や実害の有無などを考慮した上で慎重に決める必要があるでしょう。守秘義務に内容に比べて処分の程度が重すぎる場合は、無効の判決が下される可能性もあります。どこまで法的措置を執れるかについては、万が一に備えて弁護士に相談するのが賢明です。
まとめ
会社携帯の私的利用や情報漏えいを未然に防ぐには、社内ルールの整備が不可欠です。「これくらいのマナーは守ってくれるだろう」と私的利用の範囲を明確に定めずにいると、取り返しのつかないトラブルが生じることもあります。
特に個人情報の漏えいは会社の信用を失墜させます。従業員の気の緩みや小さな過失が会社に甚大な影響をもたらすことを肝に銘じ、会社携帯のルールをしっかり作っておきましょう。
また、ルールの整備と同じくらい端末やプランの選び方も重要です。「セキュリティー機能が充実した会社携帯のプランを探している」「会社携帯を安全かつ低価格で導入したい」という人は、ベルパークにご相談ください。